㉔RSウイルス感染症 
 【はじめに】生涯にわたり風邪の主なウイルスであるが、特に乳幼児期においては非常に重要である。生後数週から数か月の期間に感染する細気管支炎を起こし、入院を必要とする   ことが多い。未熟児や心肺系に基礎疾患がある乳児では重症化するため、ガンマグロブリン製剤(パリビズマブ)の予防投与が行われる。本国においては、11月から1月に流行することが多く、数か月つづく。

 【症状】いわゆる風邪症候群の主なウイルスの1つである。軽症の感冒様症状から重症の細気管支炎や肺炎などの下気道疾患に至るまで、様々である。しかしながら、初感染においては下気道疾患を起こす危険性は高く、69%の乳児が生後最初の一年間でRSVに罹患する。そのうちの1/3 が下気道疾患を起こす。2年目から4年目においても下気道疾患を起こす比率は20%を超え、無視できるものではないが、その重症度は年齢 を追う毎に減弱する。

 【病因・病態】RSVは環境中では、特に家族内では効率よく感染伝播する。乳幼児とより年長の小児のいる家族の場合には、流行期間中に家族の44%が感染したとする報告もある。感染経路としては大きな呼吸器飛沫と、呼吸器からの分泌物に汚染された 手指や物品を介した接触が主なものであり、特に濃厚接触を介して起こる。

 【検査・診断】免疫クロマト法による 迅速診断キットで抗原検出が可能である。

 【治療】対症療法薬のみである。重症例は入院治療が必要である。ハイリスク乳児に対してはパリビズマブの予防投与が行われる。

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